どちらの家庭でも玄関先にかならず一足は常備されているサンダル。
ゴミ出しやちょっと外へ出る時などにサンダルをつっかけて、という場合が多いはずです。
休みの日などは、ちょっとした買い物や散歩にもサンダル履きで出かける方も多いでしょう。
ビーチサンダルもそうですね。
サンダルが外へ出る時に履くものに対して、玄関から家に入る時にはくのがスリッパ。
こちらも玄関に常備されているものです。
みんなその形は似通っていますが、用途は全く別のもの。
いっそのこと、スリッパを家用サンダル、サンダルを外用スリッパ、海用スリッパなどと呼んでもいいようなものですが、なぜ違う呼び方になったのでしょうか。
この三つ、いつどこで生まれて、なんでそういう名前になったのか。
実はそこにはちゃんとした理由があったのです。
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サンダルの起源はなんと紀元前。
そもそもサンダルの定義というのは「靴のように足全体を覆わず、底の部分を紐やバンドで留める履物の総称で主に屋外で使用される」とされています。
サンダルという名前の由来は「板」を意味するギリシャ語の「sandalion」から。
そのルーツに関しては、紀元前2000年頃のエジプトで砂漠の熱い砂から足の裏を保護するために、革や板などに革紐などをつけて履いたのが始まりとか、古代オリエントで生まれたとか、古代の資料でも様々な場所にサンダル登場していることから、紀元前に誕生していたというのは確かなようですが、誕生した場所などは定かにはなっていないようです。
たしかに昔の壁画や絵画などを見ると、そこに描かれている人々はサンダルを履いているように見えますね。
そんな古代から履物として一般的だったサンダルが日本で「サンダル」として作られるようになったのは1930年代のこと。
少々遅めのようですが、あえて「サンダルとして」という言葉を使ったのは、「足全体を覆わない」「底を紐で留める」「屋外」といったサンダルの定義から考えてみると、それまで日本で伝統的に履かれていた下駄や草履、わらじなども立派なサンダルの一種と考えられるからです。
この日本で最初に作られたサンダルというのは木製だったそうです。
やはり下駄からの発想だったのですかね?
スリッパは実は日本生まれなのです。
そんな古代文明の時代から世界中で履かれていたとされているサンダルに対して、よく似ているスリッパ。
その定義は「滑り込ませて履く室内用履物の総称」ということ。
英語の「slip」=「滑る」が語源で、足先を滑らせるようにして履くその履き方が由来になっています。
で、このスリッパ、八重洲の仕立て職人であった徳野利三郎という人物が1876年(1868年とか1907年といった別な説もあるようです)に考案したもの。
彼は開国を機に増加した日本を訪れる外国人が靴のまま家に上がろうとするのを見て、靴のまま履いて家に上がるための履物としてスリッパを作ったのです。
つまり、スリッパは日本生まれ。
もともと家の中で履く、という前提から誕生したので、やはり「室内履き」なのです。
当時は「上靴」とか「上沓」(じょうか)と呼ばれていたようですが、外国から入ってきた文化がもてはやされていたこともあって、「滑り込ませて履く」という意味の英語から「スリッパ」という名が定着したのです。
実は、海外ではこの「スリッパ」という言葉はあまり使われていません。
私たちが思うようなスリッパのことは、日本では女性用の高いヒールがついたサンダルのことを言う「ミュール」とか「スカッフ」というのが一般的なようです。
ちなみに、このミュールというのも高いヒールのものを指すのではなく、最初は靴のまま履く男女兼用の室内履きとしてフランスで考案されたようです。
スリッパと用途は一緒だったのですね。
近代日本生まれのサンダルもありました。
サンダルは古代から、スリッパは日本生まれというのはわかりましたが、実は日本で生まれたサンダルもあるのです。
それは意外にもビーチサンダル。
夏には欠かせないアイテムですね。
そのビーチサンダルを作り出したのが、1913年に兵庫県で創業し現在も続く老舗のゴム会社「内外ゴム」。
戦後の日本の産業復興のために来日したイタリア系のデザイナー、レイ・パスティンが日本の草履を見て、それをビーチなどでも履けるようにゴムでできないものかと考え、先進の技術を持っていた内外ゴムに依頼したのが、ビーチサンダル誕生のきっかけなのです。
開発を担当したのは当時の技術者だった生田庄太郎。
試行錯誤の結果、1952年に最初のゴム製ビーチサンダルが誕生します。
アメリカで「ビーチウォーク」という名前で発売された最初のビーチサンダルですが、最初のうちは認知もなく、売り上げも低いものでした。
しかし、ハワイのサーファーたちから火がつき、瞬く間に世界中に広がっていきました。
この「ビーチウォーク」は日本では1955年に「ブルーダイア」という名前で発売。
ちなみに、この「ブルーダイア」、当然当時のものに比べると圧倒的に進化していますが、今でも1300円で販売されています。
そんな日本生まれの「ビーチサンダル」ですが、ニュージーランドでは「ジャパニーズサンダル」を略した「ジャンダル」、ペルーでは「サヨナラ」、トルコでは「トーキョー」などと呼ばれているようです。
海外では、みんな日本生まれということを知っているのですね。
サンダルとスリッパとビーチサンダル、いろいろな物語がありました。
田舎育ちなので家でスリッパを履くという習慣はありませんでしたが、私も子どもの頃、ゴムでできたビーチサンダルは、それが日本生まれとは知らずに履いていました。
大学生のときは、雑誌などで西海岸の人たちがビーチコーミング(海岸での宝探し)をするときに履く「ビーチコーマー」というレインボーカラーのビーチサンダルに憧れたものです。
どちらもルーツは日本だったのですね。
そういえば、ハワイに「アイランド・スリッパ」というレザーサンダルで有名なメーカーがあります。
その形はビーチサンダル、素材はレザー、名前はスリッパ・・・。
なんだかよくわからなくってしまいますね。
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