庭先や、道端、はたまた家の中などで見かけるチョロチョロと素早い生き物。
そうです、目にすると「あ、トカゲ!」と言ってしまうあれです。
目にした瞬間に「トカゲ!」と言ってしまいますが、これはちょっとした間違い。
ひとくくりに「トカゲ」と呼んでしまっていますが、違う種類の生き物なのです。
私は子供の頃はすべて「トカゲ」と呼んでいましたが、中にはすべてを「カランキョ」と呼んでいる友達もいました。
で、この「トカゲ」と「カランキョ」も別のものを指す言葉だったのです。
その上、家の中でよく見られる「トカゲ」のような生き物も違う種類。
実は、一般的に「トカゲ!」と呼ばれる生き物には、「トカゲ」、「カナヘビ」、「ヤモリ」の三種類がいて、それぞれが違う生態を持っているのです
そこに「ヤモリ」と似た名前の「イモリ」が参加すると、もうなにがなにやら・・・。
そんなややこしい仲間たちを少し整理してみましょう。
スポンサーリンク
一番ややこしいのがトカゲとカナヘビ。どう違うの?
先ほど述べたように、子供の頃は友達と一緒に野原や庭先などで捕まえて遊んでいました。
私が「トカゲいたぞ」、友人が「カランキョだ!」。
同じものだと思っていました。
この「トカゲ」と「カランキョ」、実は全く違うもの。
「トカゲ」は「トカゲ」ですが、「カランキョ」というのは、正式には「カナヘビ」と呼ばれている生き物なのです。
ちなみに「カナヘビ」は「カランキョ」だけではなく「カナメッチョ」や「カマチコ」など、地方や年代によって様々な呼び方がされています。
―なので、以後「カランキョ」ではなく「カナヘビ」と言わせていただきます。―
で、また「トカゲ」と「カナヘビ」のルックスは酷似しているので、私が見つけた「トカゲ」は実は「カナヘビ」で、友人が見つけた「カランキョ(カナヘビ)」が実は「トカゲ」だった、などというややこしいこともあったのかも知れません。
まぁ、いかにも小さな恐竜的な見てくれはほぼ同じ、捕まると自ら尻尾を切って逃げる、という有名な習性も同じです。
違うのは、「トカゲ」が有鱗目トカゲ科で、カナヘビが有鱗目カナヘビ科という違い。
科の違いだけですが、やはり科が違うということは、その生態にも違いがあるということなのです。
まずその大きさ、「トカゲ」も「カナヘビ」も15〜20cmと、だいたい同じですが、トカゲに比べカナヘビの方が少しスマートな体を持っています。
生息場所は、トカゲが土や石の下に潜る性質があるのに対し、カナヘビは主に落ち葉などの下。
色の違いについては、両方とも成長してしまうと茶色の体になりますが、カナヘビが幼生のころからずっと茶色なのに対して、幼生の頃のトカゲは綺麗なメタリックブルーの尻尾を持っているということ。
幼生のころであれば尻尾の色を見れば見分けるのは簡単ですが、成体になってしまうと同じような色になってしまうので、色で見分けるのは難しくなってしまいます。
体の細め、太めで区別するのも分かりにくそうな気がします。
ややこしいですね。
では、どこが一番違うのか? 見分け方は?
そもそもトカゲの語源はその生息場所から「石竜子」=「石の上にいる竜の子」からきていると言われています。
またカナヘビは古い読み方で「愛しい」=「かなしい」=「小さくてかわいらしいの」の「かな」からと言われます。
つまり、小さくてかわいいヘビだから「カナヘビ」という名が付けられたということなのです。
どういうことかというと、トカゲは体長のほぼ半分が尻尾なのに対して、カナヘビは体長の3分の2が尻尾。
トカゲに比べて尻尾がかなり長いということで、「ヘビ」という言葉が使われたのかも知れません。
見かけたときに、やけに尻尾が長いトカゲだな、と思ったらそれはカナヘビということになるのです。
両者を見分けるための一番の違いは尻尾の長さということですね。
他にも、カラダの表面を覆う鱗もトカゲは細くてツルツルとした感じ、一方カナヘビは大きくてザラザラした感じ、トカゲは上下にまぶたがあって人と同じく真ん中で閉じる、カナヘビは上まぶたがなく、下から閉じる、匂いを嗅ぐためにチロチロと出す舌も、トカゲは1本、カナヘビはヘビと同じく先が二つに割れているなどなど小さな違いはいくつかあります。
ただ、すべてよく見れば分かることなのですが、両方ともなかなか動きが素早いので、捕まえてじっくり見ない限りパッと見で判断するのは難しいですね。
ヤモリはちょっと違う存在。イモリとは名前が似てるだけ。
トカゲとカナヘビの違いはなんとなく分かりましたが、もうひとつ「あ、トカゲ!」と呼ばれてしまう生き物がいます。
それが「ヤモリ」。
家の壁や照明の近くなどで見かける、トカゲっぽい生き物です。
ただ、こちらは一見するとたしかにトカゲっぽいのですが、見分けるのが簡単なので、「あ、トカゲ!」の後に「あー、家の中だからヤモリか」と言い直されることも多いと思います。
まず、ほとんどの場合ヤモリは家の中で見られます。
その語源は、家の中の害虫を食べることから「家を守る」=「家守」=「ヤモリ」になったそうです。
有鱗目ヤモリ科に属するヤモリの大きさはトカゲやカナヘビより小さく10〜15cmほど。
特徴的なのは、前足の5本の指についた吸盤のような器官を使って壁などにくっつくことです。
またまぶたがないので、よく見ていると舌を使って大きめの目を舐める仕草をします。
そんなヤモリと間違えられるのが「イモリ」。
名前は似ていますが、まったく違う生き物です。
イモリもルックスはトカゲの一種のようなのですが、こちらはカエルやサンショウウオと同じ両生類。
トカゲ、カナヘビ、ヤモリの爬虫類とは類が違います。
トカゲは土の中、カナヘビは枯葉などの下、ヤモリは家壁の隙間などに生息しているのに対して、イモリの生息地は水辺や水の中。
鱗もなく、まさにカエルっぽい感じの皮膚です。
皮膚の感じもそうですが、特筆すべきはその色。
お腹の部分が真っ赤なのですが、これは実はイモリにはテトロドトキシンというフグと同じ毒があって、毒を持つ生物であるということを周りにアピールするための発色なのです。
見かけても、不用意に触るのは危険かもしれませんね。
ヤモリと名前が似ているのは、ヤモリの名前が「家を守る」から来ているのと同様、水辺に住むイモリは井戸の周りの害虫を食べることから、「井戸を守る」が語源になっているのがその理由です。
みんな似ているけど、全部違うんです。
トカゲ、カナヘビ、ヤモリ、イモリ。
みんなルックスが似ていたり名前が似ていたりするのですが、それぞれみんな生息場所や色、カラダの作り、属する類までが違っている生き物なのです。
一言で「あ、トカゲ!」などと言うと、彼らは「違う!」と怒ってしまうかもしれませんね。
コメント
コメントはありません。