暑くなってくると、ひやむぎやそうめんといったサッパリとした麺類が食べたくなります。
暑い夏に、氷の入った容器からそうめんをすくって、冷たいお出汁でいただくというのは、夏の楽しみのひとつでもありますね。
で、このひやむぎとそうめん、見た目も食べ方もほとんど一緒。
同じ呼び方でなんの問題もないと思いませんか?
なんで、呼び方が違うのか、そのルーツは、ちょっと探ってみましょう。
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ひやむぎは日本のうどんから、そうめんは中国のお菓子から。
ひやむぎを漢字で各書くと「冷麦」。
ひやむぎは室町時代頃から食べられていたもので、もともとはうどんから派生したものです。
うどんと同じく、小麦粉に塩、水を加えて練ってうどんよりも細く切ったものを「切り麦」と言い、それを熱い汁で食べたり、冷たい汁で食べていました。
呼び名は熱い汁で食べるのが「熱麦」、冷たい汁だと「冷麦」。
それがいつしか、麺自体を「ひやむぎ」と呼ぶようになったと言われます。
一方、そうめんを漢字で書くと「素麺」。
こちらは奈良時代に中国から伝わった「索餅」(さくべい)という、米粉と小麦粉を練ってのばしたお菓子が起源とされています。
その後、同じく中国から油などを加えて細長く伸ばす「手延べ」の製法が伝わり、「索餅」はより細く伸ばされた「索麺」となり、「素麺」になっていったとされています。
なので、ひやむぎは蕎麦やうどんと同じく「手打ち」と言い、そうめんは手打ちではなく「手延べ」と言われるのが一般的なのです。
その違いは製法ではなく、やっぱり太さだけでした。
当時は生地を薄くして細く切ったものをひやむぎ、油などを加えて手で細長く伸ばしたものがそうめん、と区別されていたようです。
生地を切っていくわけですから、ひやむぎの断面は四角だったようですが、手で細く伸ばしていくそうめんの断面は円形ということになります。
近年では製麺機などの技術の発展によって、油不使用のそうめん、油を使って手延べするひやむぎなど様々な種類が登場し、その区別はさらに曖昧になってきました。
原料も製法もほぼ同じ。
では、ひやむぎとそうめんは。いったいどこで区別されるのかというと、実はその太さの違いだけのことなのです。
農林水産省が制定するJAS規格によると、「直径1.3ミリ未満がそうめん」、「直径1.3ミリ以上1.7ミリ未満がひやむぎ」とされています。
「直径1.7ミリ以上」はうどんです。
ただし、これにも曖昧な部分があって、機械を使わず「手延べ」製法を使っている場合のみ、直径1.7ミリ未満であれば、ひやむぎでもそうめんでも、どちらの呼称を使ってもいいとされています。
これは、機械を使った製法だと均一の太さにすることが可能だけれど、手延べの場合は部分部分によって太さを均一にあるのが難しく、太さの差が出てしまうからという理由からです。
ますますその差があやふやになってしまいますね。
私の中では、ひやむぎは少し太くて四角い断面、そうめんは細くて、丸くて、油を使っているから、よりツルツルした食感というイメージだったのですが、そうでもないようです。
ひやむぎでも油を使った手延べ製法で、そうめんも油を使わず機械製法で作られることもあるわけですから、断面云々とかツルツル感とか、そういう感覚からの区別も成り立ちませんね。
ちなみに、日本一細いそうめんは奈良の「三輪山本」が作る「白髪」というそうめんと熊本の「麺補ゆきやぎ」が作る「ゆきやぎそうめん」で、その太さはなんと0.3ミリほど。
もはや芸術品です。
また、一番太いそうめんは徳島の「半田手延べそうめん」で、その太さは1.7
ミリ。
え? とお思いですよね。
1.7ミリっていったらひやむぎじゃないの? というご意見もごもっともです。
JASの規格上はひやむぎに分類されてしまうこの「半田手延べそうめん」ですが、江戸時代から続く伝統と、その昔ながらの製法が認められ、そうめんと分類されているのです。
伝統は規格を凌ぐということですね。
ピンクや緑の麺、あれにも大切な役割がありました。
ひやむぎやそうめんの中に、何本かピンクや緑の色が付けられたものがあります。
子供の頃、なんか違う味が付けられていると思って、あの色付きの麺を選んで食べていたものです。
でも、残念ながら味は一緒。
では、なんのために色が付けられているかというと、それはひやむぎとそうめんを区別するためなのです。
ひやむぎとそうめんがあまりに似ていて、作り手も見分けがつきにくい、ということでひやむぎに色付きの麺を入れて区別していたということです。
作り手の方でさえ見分けがつきにくいのですから、素人の私たちが見分けるのは至難の技ということですね。
ただ、今ではあの色付き麺は飾りとしてそうめんにも入れられることもあるようです。
そうなると、本当にもうどっちでもいいのでは? なんて思ってしまいます。
似たような関係はラーメンとパスタにも。
ひやむぎとそうめんだけではなく、他にも似たような関係がある麺があります。
まず、中華麺。
こちらの分け方は「番」という言葉で表されるようです。
この「番」というのは、麺を切り出す刃の番手のことで、普通10〜28番まで2番手おきに用意されています。
一番太いのが10番で3ミリほど、一番細いのが28番で1ミリ程度、一番一般的な太さが20番の1.5ミリだそうです。
この20番を堺に、番手が下がれば太麺、極太麺、上がると細麺、極細麺となっていくのです。
また、もうひとつ言い方の違う麺がパスタ。
代表的なのはスパゲティとスパゲティーニです。
こちらこそ、ひやむぎとそうめんの関係そのまま。
スパゲティの規格が2ミリ程度なのに対し、スパゲティー二は1.7ミリ。
原料も使い方もほぼ一緒。
どうです、ひやむぎとそうめんの関係とまったく同じでしょ。
中華麺より近いかもしれませんね。
こんな風に、麺を良く食べる国では太さの違いで呼び方を変えたり、料理にあった太さのものを使ったりと、様々な工夫がされてきたのです。
麺類が大好きな私としては、やはり夏はひやむぎやそうめんが一番だと思います。
なんといって涼を呼んでくれる麺ですものね。
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