お刺身に必ず添えられている「つま」、ご存知かと思います。
お店でも、スーパーでもお刺身といえば、必ず細く切った大根が添えられていて、スーパーなどでは、千切りの大根が「お刺身のつま」として売られています。
なので、あの千切りの大根=「つま」、と思っていらっしゃる方も多いと思いますが、「つま」は大根のことだけの呼び名ではないのです。
実は、「つま」にはいろいろなものが使われている上に、ちゃんとした役割もあるのです。
普段何気なく「お刺身のつま」と呼んで、つい脇役扱いをしてしまっていますが、その本当の意味と役割を知っておきましょう。
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なぜ「つま」というの? 漢字で書くと?
まずはなぜ「つま」という名前が付けられたのか。
この「つま」を漢字で書くと「妻」。
奥さんを表す妻と同じです。
そもそも「妻」というのは古くからある建築用語で、家の中心からみて長手方向の端の部分を「妻」と呼んでいたのです。
男尊女卑の時代に、主人は家の中心にいて、奥さんは家の端の方=妻に、ということから奥さんのことを「妻」と呼ぶようになったと言われています。
そんな「妻」の意味を辞書で調べると、「主のものに添えられるもの」といった意味も出てきます。
そこから、主役の刺身に添えられるものという意味で「つま」と呼ばれるようになったのです。
また別に、「褄」(つま)という漢字を使うという説もありますが、こちらの「褄」という漢字には端という意味があり、「端にあるもの」と意味合いからのものと思われます。
どちらにしろ、「つま」とは「端に添えられたもの」ということなのです。
「つま」と言っても種類や呼び方にいろいろな種類が。
実はひとことで「つま」と呼んでしまっていますが、この「つま」には三つの種類があるのです。
それは「けん」、「つま」、「からみ」の三種類。
その三つを総称して「つま」と呼んでいるのです。
まず、「けん」というのは漢字で書くと「剣」、刀のことです。
たまに、お刺身の脇に細く切った大根やミョウガなどが縦に盛られているのを見たことがありませんか?
それが「けん」です。
大根でもミョウガでも人参でも、縦に盛られていたら「つま」ではなく「けん」と呼ぶのが正しいのです。
次に「つま」。
一般的な総称ですが、こちらにも「かざりづま」と「しきづま」の二種類があります。
しその実、菊の花、ボウフウ、わかめ、パセリなどがお刺身の脇にのっていることがありますね。
そちらが「かざりづま」です。
その名の通り、お刺身の脇に飾られているものを表します。
「しきづま」も読んで字の如し。
細切の大根や人参、しその葉など、お刺身の下に敷かれたもののことです。
「からみ」は「辛味」、つまりわさびや生姜、ゆずなど、実際に辛味や風味を与えるものです。
「つま」の呼び方について述べましたが、呼び方だけではなく、野菜などの種類もたくさん出てきたのにお気づきでしょう。
大根の細切りだけだと思っていた「つま」ですが、実はミョウガ、人参、しその実、菊の花、わかめなどなど、それだけではなく、わさびや生姜、ゆずも「つま」という言葉でくくられているのです。
奥さんの「妻」同様に「お刺身のつま」にも大切な役割が。
いろいろな種類がある「つま」ですが、単に添え物としてお皿に乗せられているわけではありません。
そこには大切な役割があるのです。
「つま」といって最初に思い浮かぶのはやはり大根ですね。
「大根役者」という言葉をご存知だと思います。
この言葉、売れない役者を指す言葉ですが、その語源は大根には殺菌作用があって食べることによって食中毒の防止になる、つまり「食あたりしない」=「あたらない」。
それが転じて「あたらない役者」=「大根役者」という呼び方になったのです。
そもそも、生の魚を食べるお刺身、やはり怖いのは食中毒です。
それを防ぐために大根やしその葉、菊の花、わさび、生姜といった殺菌作用のある野菜などが「つま」に使われるようになったのです。
また、そんな殺菌のためだけではなく、より香りや味を引き立たせたり、見た目を華やかに美しく演出したりという役割も担っています。
たしかに、お皿にお刺身だけ盛られているより、大根や人参、菊の花などが一緒に添えられていたほうが華やかだし、わさび、生姜、ゆずなどを使うことで味や香りが格段に上がるものです。
また日本料理には「あしらい」という用語があって、主菜に添えるものを意味しています。
お椀のネギ、焼き魚などに添えられるはじかみや大根おろしがそれに当たります。
こちらも、殺菌作用や香り、味をよくするためのもの。
つまり、「つま」というのはお刺身だけに使われる「あしらい」ということなのです。
私としては「端に添えられるもの」という意味の「つま」と呼ぶより、この「あしらい」という言葉を使ったほうが風情があるように思えてしまいます。
「つま」は食べる? 食べない?
私はお刺身を食べるときは必ず「つま」も全部食べる方ですが、最近では「つま」を食べないという人も少なくないようです。
あまりに真っ白い大根の細切りには漂白剤が使われているという話もあるようですが、先ほども述べた通り、殺菌作用があって味や香りを引き立たせる「つま」を食べない手はありません。
食用菊ではない菊の花や、飾りとしての役割のない「つま」は食べてはいけませんが、お刺身好きの私にとって「つま」は、お刺身をより美味しく楽しむものなので、食べることをおすすめしたいですね。
実際に、奥さん=「妻」と同じく大切な役割があって、なくてはならないものですから。
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