四角くて白い朝食やサンドイッチの主役、食パン。トーストにマーガリン・ジャムなどの塗り物や好きな物を挟んでなどなど、何にでも合う安定感のあるパンですよね。
でも気になるのは、何故“食”パンなのでしょう?パンなのだから食べられるのは当たり前なのに………
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目次
食パンと名付けられた5つの説
食パンがどういう理由で食パンと言われ始めたか、実はこれには5つの説が存在します。何故そんなにも説があるのかというと、それは第二次世界大戦の時の空襲で当時の資料等が焼けてしまったので、正確なことが今は誰もわかっていないからなのです。
1、主食となるパンだから
日本でパンが最初に一般的になった時、主流となっていたのはアンパンなどの菓子パンが主でした。
というのも、当時の日本ではパンを作るのに欠かせない酵母(イースト菌)を安定して手に入れることが難しく、代用品としてお酒の麹菌などを使っていました。
ですがこれだとパンを大きく膨らませることが出来ず、結果としてパン部分の小さい菓子パンが日本では出回ったのです。
その後イースト菌が簡単に手に入るようになり、大量生産出来る食パンが学校給食で配給されるなどして、「主食として食べられるパン」として世間に広まったという説があります。
2、元が本食という名前のパンだったから
第二次世界大戦以前、明治初期頃のパン職人達は食パンの原型となったイギリスやフランスのパンを「本食」(外国人達が食べる西洋料理の、主食となる食べ物のパン)と呼んでいました。
そこから略されて、今の食パンという呼び方になったという説があります。
3、デッサンなどで使われる消しパンと区別するため
美術では木炭でデッサンをする時、パンを消しゴムの代わりに使って線を消すことがあります。
これは消しゴムよりも消しパンの方が柔らかくて紙を傷つけにくく、油分が少ないので線が滲みにくいのが理由で、今でも実際にデッサンの時に消しパンが使われています。
この消しパンと区別するため、「食べられるパン」という意味で食パンと名付けられた、という説があります。
4、酵母に食べられたパンだから
食パンは中を見るとふっくらと膨らんでいて、中が穴で隙間だらけですよね。これは実際に酵母がパン生地を食べたから出来る穴なのですが、これをそのまま
「酵母に食べられたパン」と名付けたのが由来だ、という説があります。
5、フライパンと名前が似ていてややこしいから
フライパンという名前は元来の意味でいうと「焼く・揚げる(Frying)鍋(Pan)」という意味なのですが、これがキッチンだと二つパンがあってややこしい。この二つを分かりやすく区別するために、パンのほうを食パンと名付けた、という説があります。
実は海外に食パンはない?
名前の由来はややこしかった食パンですが、実は厳密に言うと食パンというのは海外では売っていません。これは中国と日本のラーメンとの関係に似ています。
本場中国のラーメンと日本のラーメンは見た目は似ていますが、味は全くの別物といって言いほど違います。これは今食べられている日本のラーメンが、日本に伝わってから独自に日本人に合うようにアレンジされた日式ラーメンだからです。
これは食パンにも実は言えることで、日本の食パンの原型となったのはイギリスのホワイトブレッド(またはホワイトローフ)というパン。これは食パンのような長方形ではなく、上部がふっくらと膨らんだ山形のパンです。
このホワイトブレッドはバターや砂糖を加えず塩と水だけで練った素朴な味付けがされたパンで、日本の食パンには牛乳や生クリーム、マーガリンやバターなど油脂類を入れて作られることがほとんどであり、場所によっては菓子パン扱いされることもあるほど。
このように元のホワイトブレッドとはもはや別物であり、食パンという名前自体が日本で付けられた日本のパンという証なのです。
日本のパン祖 江川太郎左衛門
最後に、日本で最初にパンを作ったのは誰なのか?というのをご紹介します。
日本で最初に本格的なパンを作ったのは天保13年(1842年)、伊豆韮山の代官・江川太郎左衛門という人だと言われています。
1543年のポルトガル人の鉄砲伝来とともにパンの製造方法も日本に伝わっていたのですが、この後日本は鎖国令の施行により鎖国状態に。その時にパンも世間から消え、長崎のオランダ屋敷でほそぼそと受け継がれている状態でした。
それから江川太郎左衛門の時代、幕府はアヘン戦争でイギリスが勝ったのをきっかけに「イギリスが日本にも攻めてくるのではないか?」と危惧しました。そこで軍学者でもあった江川太郎左衛門にとぎ汁や炊飯の煙が出る米の代わりになる、いわゆる乾パンの製造を指示します。
こうして江川太郎左衛門は日本で初のパン専用の焼き釜を作り、これがそこそこの評判を得て各地で大規模なパン製作所が作られるようになった、ということです。

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