夏の風物詩といえば、花火だったり海水浴、七夕、ビアガーデンなど様々なものが思いつきますが、忘れてはいけないのが幽霊。
あちらこちらで「怪談話の夕べ」といったイベントが催され、稲川淳二さんが東奔西走する季節ですね。
なぜ幽霊といったら夏が本場なのかといえば、それはお盆の時期だから。
お盆の娯楽のひとつにお芝居があって、そこで演じられた演目が「四谷怪談」「番町皿屋敷」といった怪談話が多かったらしく、それが祖先の霊が戻ってくるというお盆と相まって、夏といえば怪談、幽霊というふうに結びついていったと言われています。
夏の時期でも怪談を聞くと背筋がスーッと寒くなるから、などとも言われるようですが。
で、幽霊といって最初に思いつくのが、白装束に身を包んだ髪が長く足のない女性が「うらめしやー」と呟く絵面です。
実際にそんな場面に出くわしたらきっと「出たー! お化けー!」と言ってしまいますね。
それと、ゲゲゲの鬼太郎でも有名な妖怪。
水木しげる先生の手によって、ちょっとコミカルに描かれていますが、実際に塗り壁や砂かけ婆に出くわしたら、こちらも「お化けー!」と絶叫するはずです。
幽霊を見てお化け、妖怪を見てもお化け、ちょっと不思議だと思いませんか?
お化けと幽霊、そして妖怪、この三つの関係ってどうなんでしょう。
同じもの? 違うもの?
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幽霊になるのは人間だけ、足がないのにも理由があるのです。
ご存知のように幽霊の常套文句は「うらめしや」、漢字で書くと「恨めしや」。
つまり、世の中や他の人などに恨みや未練を持って亡くなった人の魂が、因縁のある人の前や場所に姿となって現れるというのが幽霊なのです。
四谷怪談のお岩さん、番町皿屋敷のお菊さんもそうですね。
動物の場合は幽霊という言葉は使わないというのが通例のようです。
そんな幽霊、先ほども述べたように、典型的なスタイルは白装束、足がない、柳の下といったところ。
白装束というのは死に装束のことですから、亡くなった人であるということを表しています。
足がない、というのも幽霊の一大特徴のひとつですが、幽霊に足が亡くなったのは江戸時代以降とされています。
この幽霊から足がなくなったという理由にはいくつか説があって、仏壇に炊かれたお香の煙で足が見えなくなっているという説、地獄の門を通る時に切り落とされたという説、江戸時代中期の人気画家・円山応挙がそれまでの幽霊の絵よりもインパクトのある絵にしたくて足のない幽霊を描いてそれが有名になったという説などがあるのです。
ただ、どの説も俗説とされていて、はっきりとした理由はわからないようです。
それとなぜ柳の下、という理由。
これは中国の陰陽説から来ているらしく、それによると柳は「陽」、対して幽霊は「陰」、二つの対立した「気」を一緒にしたものだとされています。
妖怪の不可思議な力と言い伝え。
もうひとつ、混同してしまいがちなのが妖怪です。
ゲゲゲの鬼太郎などで有名な、子泣き爺や砂かけ婆といったものがそれに当たります。
幽霊と違うのは、この妖怪というのは「実態がある」ということ。
そしてもう一つの特徴は「人間の理解を超える不可思議な力を持っていて、人の理解を超える異常な現象を引き起こす力を持っている」ということです。
幽霊が実態のない霊魂で、恨みや未練を訴えるため目の前に出てくるの対し、妖怪は実際に不可思議な力を使って、何か異常な現象を引き起こすのです。
つまり、夜道を歩いていて急に背中が重くなったなどという時には「子泣き爺が背中に取り付いた」とか、突然切り傷ができたという時には「かまいたちが出た」といったように、どちらかというと民話伝承的な要素を持った存在でもあるのです。
「こんなときは、こんな妖怪が悪さをしている」という昔からの言い伝えによって創り上げられたのですね。
野菜も生きている人も「お化け」?
見る機会はまずないとは思いますが、万が一幽霊や妖怪を見たときなど、つい「お化けー」と言ってしまうのが普通です。
幽霊が恨みを持った人の霊が生前の姿で現れるのに対して、お化けというのは人ではなく、動物だったり物だったりが、おどろおどろしい姿に変わって現れるものの呼び名とされています。
姿形を変える意味で「化ける」という言葉が使われたのです。
有名なところでは、傘が姿を変えた「傘お化け」、提灯が姿を変えた「提灯お化け」などがありますね。
そんな風に考えると、壁が大きくなって目や口、手足がついた塗り壁や、反物に目がついて空を飛ぶ一反木綿などは、妖怪という意識を持っていたのですが、お化けということになるかも知れません。
ただ、このお化けですが、そんなふうに恐怖を与えるようなものだけに使われる言葉ではありません。
めちゃくちゃ大きなカボチャなどは「お化けカボチャ」と言われますし、タクシー業界では数万円という遠距離を使うお客さんを「お化け」と呼んだりもするそうです。
ここでは「普通とは違うもの」という意味合いで、野菜や人にまで「お化け」という言葉が使われているというわけです。
実は幽霊も妖怪もお化けなのです。
そんな風にこの「お化け」という言葉は幅広く使われているもので、幽霊も妖怪もその中に含まれるというのが一般的な理解です。
幽霊と妖怪は明らかに違うのですが、そのふたつとも「お化け」で間違いないのです。
つまり、幽霊でも妖怪でも出くわしたときは「出たー! お化けー!」と言って間違いではないのです。
まぁ、どちらにしろ、あまり出くわしたくはないものですね。
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