6月の花といえば、一番先に思いつくのは紫陽花ですね。
「6月のイメージは?」というアンケートでも、「梅雨」や「雨」の次いで「紫陽花」という答えが上位にランクされているようです。
そんな紫陽花、私も大好きな花ですが、同じ株でも違った色の花が咲いたり、咲き始めと色が変わってきたり、植え直したら違った色の花が咲いたりと、その花の色は七変化。
家で咲いている2本の紫陽花も、同じ株分けだったにもかかわらず、片方は綺麗な青紫、片方は赤紫とまったく違う色の花をつけています。
そんな、くるくる変わる紫陽花の花の色、ちょっと不思議だと思いませんか?
それにはちゃんとした理由があったのです。
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紫陽花はもともと日本生まれでピンク色が基本です。
先ほどから「花」と書いていますが、私たちが花のように見えているのは実際は花弁ではなく「ガク」の部分です。
花はそのガクの中心部分に小さく咲いています。
ちょうどそれが花弁に囲まれたオシベやメシベのように見えるので、ガクが花弁に見えるのです。
そんな紫陽花ですが、海外からの外来種ではなく、もともと日本に咲いていた「ガクアジサイ」が起源です。
このガクアジサイの「ガク」は、花弁に見えるガクではなく、漢字で書くと「額」。
4枚のガクに囲まれたように咲く小さな花が、まるで額に囲まれた絵のように見えることから名付けられたようです。
そのガクアジサイに改良が加えられ、現在の姿になったと言われています。
そんな紫陽花、先祖でもあるガクアジサイも含め、最初は黄緑、白、ピンク、青、紫というふうに色が変わってきます。
では、もともとの色はというと、紫陽花の色を出しているのは「アントシアン」というピンクの色素。
なので、紫陽花のもともとの色はピンクということになります。
ちょっと意外ですね。
ピンクの紫陽花が青に紫に、これってどうして?
ピンクが基本の紫陽花がなぜ色の七変化を演出するのでしょうか。
実は、その原因は紫陽花の色の元であるアントシアンという色素にあります。
この植物に多く含まれているアントシアン、とても不安定なもので、そのため様々な元素と結びつきやすく、それによって植物の花の色がかわっていくという特徴を持っているのです。
中でも一番色に影響を与えるのが土中に含まれているアルミニウム。
アントシアンはアルミニウムと結びつくと青を発色する性質があります。
そのため水と一緒に土中に溶け出しているアルミニウムを吸い上げることによって、青い花を咲かせるというわけです。
植えられている場所によってアルミニウムを含む割合が違っていたり、その株によって吸い上げる力にばらつきがあったりするので、同じ場所に植えられていても青だったり紫だったりという差が生まれるのです。
よく、土が酸性だと青い花、アルカリ性だと赤紫に、などと言われていますが、土が酸性だとアルミニウムが溶け出しやすいという理由からなのかもしれませんね。
もともと紫陽花は紫陽花ではなかったのです。
日本生まれのガクアジサイ、このアジサイに「紫陽花」という漢字が当てられたのは平安時代中期の頃。
奈良時代に編纂された「万葉集」では「味狭藍」「安治佐為」という文字が使われていました。
それを、源順(みなもとのしたごう)という歌人が中国の有名な歌人である白居易(白楽天)の漢詩に使われた「紫陽花」という字を当て、広まっていったということです。
ただ、実はこれがちょっとした勘違い。
白居易が詠んだ漢詩というのは、彼が山寺を訪れた時にひっそりと咲いている名も知らぬ紫色の花を見て詠まれたものです。
そして、この「紫陽花」と詠まれた花は、実はアジサイではなくライラックだった、と言われているのです。
源順は同じく寺社などにひっそりと咲く紫陽花を見て、その色や佇まいから同じものと思い、「紫陽花」の字を当てたのだと思われます。
つまり、もともとの「紫陽花」というのは、実際は違う花のことだったというわけです。
ちなみに、現在中国語でライラックは「紫丁香」、日本から伝わった紫陽花は「斗球花」と書くようです。
美しく色変える紫陽花、実は毒が含まれていることが。
花もそうですが、濃い緑で凛とした姿を持つ紫陽花の葉は水羊羹などの和菓子の装飾として供されることがよくあります。
たしかに季節感を演出し、涼しげにも見えますが、この紫陽花の葉には毒性がある場合があると言われています。
「場合がある」と表現したのは、個体によって毒性のあるものとないものが混在しているという調査結果があるからです。
毒性を含むものに関しては「青酸配糖体」と呼ばれる植物由来の有毒成分が含まれていたとされています。
この青酸配糖体は胃の中の酵素と反応して青酸化合物が生成されるというもので、実際に紫陽花の葉を食べて嘔吐などの中毒症状を起こしたという実例もあります。
まだ、その毒性がある場合があるというのは事実ですが、まだはっきりとした詳細についてはわからないようです。
ですので、料理や和菓子などの装飾として紫陽花の葉が使われていたら、口にしないようにしましょう。
直接口にしなければ大丈夫だとされています。
ちなみに、紫陽花によく似合うカタツムリなども、紫陽花の葉は食べないと言われます。
夏になって紫陽花の葉に食み跡がついていたら、それは夏によく見るアオドウガネという緑色をしたコガネムシの一種の仕業です。
文字通り蓼食う虫も好き好き、彼らは大丈夫なのですね。
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