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「五月蠅い」と書いて「うるさい」と読むのは何故?誰が最初に使ったの?

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「五月蝿い」という文字を目にしたことがありますか?

読み方は「うるさい」。

たしかにブンブンと飛び回ったり、食ベ物の周りにいたりする蠅はかなり煩わしい存在ですね。

同じ「うるさい」で「煩い」と書く場合もありますから。

では、この同じ意味と同じ読みを持つ「煩い」と「五月蝿い」、いったいどこが違うのでしょうか?

また、なぜ「五月蠅い」と書いて「煩い」と読むようになったのでしょうか?

それこそ「七月蚊」とか「八月蝉」の方がよっぽどうるさい気がしますよね。

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「煩い」と「五月蝿い」にはニュアンスの違いこそあれ、さほど大きな違いはありません。

そもそも「うるさい」という言葉は、「心」を意味する古語の「うら」の母音が変化して「うる」になり、そこに「狭い」を意味する「さし」がついたものです。

つまり、「心が乱されて心が閉じてしまう」といった意味の言葉です。

「煩い」と「煩わしい」(わずらわしい)に同じ字が使われているのが、その意味合いからもわかりますね。

そんな語源を持ち、同じ読みと意味を持つ二つの言葉ですが、その意味の違いはほとんどありません。

ただ、字面から想像されるように「煩い」の方は「わずらわしい」とか「めんどうである」といったニュアンスが、「五月蝿い」の方には「しつこくて苛立つ」といったニュアンスが含まれているようです。

たしかに蠅はしつこくてイライラするものですが、5月の蠅ってそこまでうるさいものでしょうか?

旧暦の5月は新暦だと5月下旬から7月、梅雨ですね。

ご存知の方も多いと思いますが、季節の言葉が入った昔からの諺や言い伝えはすべて旧暦が基本になっています。

太陽を基準とした新暦に比べ、月を基準とした旧暦では多少の季節のズレが出てしまいます。

つまり、旧暦の5月というのは新暦だと5月下旬から7月にかけて、つまり梅雨の真っ最中ということになります。

私の実感としては、最近では、梅雨といったら6月下旬から7月下旬といった感じで、実際の季節はまずますズレていっているような気もしますが・・・。

少し話は逸れましたが、なので「5月の蠅」といったら梅雨時の蠅のことなのです。

ジメジメと鬱陶しい季節に、部屋の中を蠅が飛び回ったり、群がっていたりしたら、余計に鬱陶しい気分になってしまいますね。

また、梅雨時に大量発生する小蝿や、群がる蠅のことは「五月蝿」(サバエ)と呼ばれていて、その「五月蠅」に語源を持つ「さばえなす」という言葉は「騒ぐ」「荒ぶる」という言葉にかかる枕詞にもなっています。

この辺からも「五月蝿い」というのが「騒がしい」「鬱陶しい」を意味する起源になったのかもしれません。

「五月蝿い」は当然当て字。では誰がいつ使い始めたの?

「五月蠅」という言葉が使われたのは日本書紀の時代とされています。

読み方は「サバエ」。

ただ、この時代で使われた「五月蠅」(サバエ)というのは蠅ではなく蜂であったとされているようです。

では、実際に「五月蝿い」という表現が使われ始めたのはいつのことでしょうか。

いろいろな説もあり、よく言われているのは夏目漱石が小説の中で使ったという説です。

ですが、夏目漱石の小説を紐解くと、上梓した出版社によって「五月蝿い」という表現と「うるさい」という表現が混在しています。

つまり、漱石が肉筆で原稿用紙の上に「うるさい」と書いたのか、「五月蝿い」と書いたのかははっきりしないというのが正直なところです。

なぜ漱石が使ったという説が浮上してきたかといえば、それは夏目漱石という作家が当て字を多用することが多かったからだと思われます。

漱石は小説の中で「誤魔化す」を「胡魔化す」、「焼餅」を「焼持」、「尻餅」を「尻持」などと表現してきました。

ですので、「うるさい」を「五月蝿い」と書いたのは夏目漱石なのではないか、という説ができ、出版社によって表記の違いが出たというわけです。

では、いったい誰が、ということになりますが、いまでは樋口一葉が「十三夜」の中で用いたのが最初であろう、という説が一般的になっています。

たしかに「十三夜」の一説に「五月蝿さ」(うるささ)という表記がありますので、樋口一葉のこの言葉が起源であるという説には信憑性がありそうです。

この樋口一葉の「十三夜」が発表されたのは明治28年(1895年)のこと。

夏目漱石が「吾輩は猫である」でデビューを飾る明治38年(1905年)より10年も前のことですから。

なぜ「蠅」? 「蚊」でも「蝉」でもよかったのでは?

実際に「五月蝿い」を広めたのは樋口一葉の小説らしいというのはわかりましたが、ではなぜ「蠅」なのでしょう。

うるささで言えば、耳元にプーンとくる蚊だったり、真夏のジリジリした暑さの中、大きな声で鳴く蝉だったりの方がしっくりくる感じです。

それはやはり「五月蠅」(サバエ)を起源としたものだと思われます。

枕詞として「騒ぐ」た「荒ぶる」にかかるということ。

旧暦5月(新暦5月下旬〜7月)の梅雨時の見にまとわりつくような蠅は、季節の鬱陶しさと相まって苛立ちをより募らせてしまうということ。

そんなことから「五月蠅」という言葉を「うるさい」と読むようにしたのではないかと想像できます。

大元の言葉「五月蠅」(サバエ)がなかったら、もしかしたら本当に「八月蝉い」(うるさい)なんていう言葉が使われていたかもしれませんね。

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