大好きな作家の頭の中を覗くという行為。至高である。
大好きという言葉では語弊があるかもしれない。この、辻村深月という作家をなんと形容したら良いのだろうか。
私を作った神様のような、先生のような、光のような、救いのような。・・・とにかく、私は、彼女が作り出す物語をも飛び越えて彼女自身さえも少しでいいから知りたい、そんな気持ちでエッセイに手を伸ばしたのである。
彼女の物語に登場する人物たちは、彼女にとっては子供のような感覚かもしれないが、私にとっては姪や甥のような感覚。人によっては友人だったり、憧れだったりもするが、自分の中の心の距離が物凄く近い。
ほかの作家の本での登場人物は、ここまで近く感じることはそうそうない。本の中の登場人物でしかないのだが、辻村深月の作品に関しては別格だ。登場人物が、長い時を経て、新刊に登場することもあり、そのときは「久しぶり」という気持ちが強く、それだけで泣いてしまうほど。
「昔あんなことがあったのに、こんなに元気に大きくなって・・・」もはや誰目線か分からないが、ひとりひとりへの思い入れが強すぎる。この記事を辻村ファンが読んでくれてるとしたら、私のライターネームの意味も分かるだろうと思う。
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辻村深月中毒なら間違いなく酔える作品
「好きなものが多すぎて、ごめんなさい!」
作家になる前から、作家になってから、
夢中で追いかけてきた小説、漫画、アニメ、
音楽、映画、美味しいもの……etc.
すべてが詰まった、読むと元気になれるエッセイ集!特別収録!
短編 おじいちゃんと、おひさまのかおり
今回のエッセイは、短編集が収められていて、それだけでも歓喜であるが、なんと自作解説が載っている。
もっとそれ詳しく聞きたい!!と思うようなことも、そんなことがあったのね・・・と思う内容まで。この人が作り出す物語は、いつだって私にしたら光で、偉大だった。その背景が見えるのは私にしたら嬉しくて仕方のないこと。
なんか最近私本当に駄目だなって時は、「スロウハイツの神様」で赤羽環に喝を入れてもらうし、なんでこんなに理不尽なことばっかり・・・と落ち込む時は「ぼくのメジャースプーン」で秋山先生に色んなことを教えてもらい、どうしようもない溢れんばかりの光を浴びたいときには「凍りのくじら」を手にとって、ドラえもんの道具で照らしてもらう。
今思えば、そんなに好きじゃなかったドラえもんの虜になったのも、「凍りのくじら」からだった。
「ドラえもんの道具だったら何が欲しい?」という会話も、「凍りのくじら」に影響されて色んな人と話したなあ。最後には必ず「凍りのくじら」の話になって、辻村作品を勧めてしまう。笑
私の強い勧めで辻村作品を読んでくれる友人も結構いて、その度に、「あいつのあの言葉は無いよね」「あの子本当によく頑張ったよね」「ってか○○格好よすぎない??」という会話に発展する。友人も私同様、辻村作品の登場人物と心の距離が近い。勧めて読んでくれた子達は、みんな「良かった、良かった」と言ってくれる。私の友人であるから、感性が近いのかもしれないがそれでも、嬉しいものだと思う。
普段あまり再読をしない私でも、辻村作品は別で、何度も何度も繰り返し読んで、古びてしまっている本もある。同じ本でも3冊くらい持っているものもあって、中でも「スロウハイツの神様」に関しては、あまりに読んでもらいたいと、その人に本をそのままあげてしまうこともあった。(貰う方は迷惑だろうけど・・・笑)
何がこんなに惹きつけるのか。私は、大きな共感では無いかと考える。
辻村深月のどの作品に出てくる登場人物も、みんなちょっとずつ私。読み手が自分を重ねやすいように出来ている。女の世界を生きてきた、女を一番近い距離で見てきた女にしか書けない黒い部分も、「私もそんなことあった」「そんなこと言われた」という共感を生んでいる。「イヤ」だけで終わらせないラストや、突き刺さったまま抜けない名言も多く、十代という多くの悩みを抱えて生きづらい中で、辻村深月が作った世界に入れたことを誇りに思う。あの頃、私は辻村作品の中に居場所を見つけていたのではないかと今になると思える。そのくらい、世界だった。
新刊を読むまで死ねない、という思いは希望になり、今の私にも繋がっている。
今や、新刊を読みたい、でも勿体無い、とページをめくれずにいる本もあり、我ながら病的だと思う。笑) それでも、発売日当日に書店に行き、辻村深月の新刊を購入するのは今でも楽しみなのは変わらない。また、あの子に会えるかもしれない、とワクワクしながら。
私は、辻村深月が好きで、エッセイを購入したが、エッセイから辻村ファンになる人も多いかもしれない。エッセイで作家の本質のようなものを見て、この人の本なら読みたい・・・そう思って読んでくれる人。私は、エッセイがあまり好きではなく、本当に好きな作家のエッセイしか読めないのだが、そういう楽しみ方もしてみたい憧れはある。この人のエッセイ凄く良いんだよ、なんて勧められてみたいもんだ。・・・でもエッセイ勧めるって結構、ハードル高いな・・・(いま自分がしていることなのだけれど)
最後に伝えたいこと
全然読書なんてしたことがなくて、好きな作家なんて答えられなくて、好きな本のジャンルさえ自分でも分からない、でも、とにかく読んでみたい、本を。そう思っていた、あの頃、本屋に行って片っ端から本を読んで、これは違うこれは違うともがいて見つけた、私のお気に入りの、好きな作家さん。辻村深月。彼女の影響で、私は身につけるアクセサリーさえ、月のかたちや兎をかたどったモノが多い。
彼女の物語に背中を押されることも、受け止められることも多かった。今でもどうしようもないときは、彼女の物語に力を借りるし、私の中での彼女の物語の立ち位置は揺るがないものだと言い切れる。
まだ、本を読んだことのない人や、お気に入りの作家を見つけている途中の人、この記事を読んで、ただ興味が湧いた人など、多くの人が辻村深月の作品に触れ、魅了されることを心から願う。何年経っても、思い出せる小説の一文が、自分の心を成長させてくれ、支えになることって、必ずあるから。

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