この本を読了したのは、今から四年ほど前こと。それから沢山、本を読んできたが、今でも思い出せる、この本の冒頭。
「お父さんを、辞めようと思う。」
この一言でグッと惹きつけられて、読み終わるまでに時間は、いらなかった。
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迷った時には、この作品
切なさの分だけ家族はたしかにつながっていく。
佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて……。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。
吉川英治文学新人賞受賞作。
家族というのは、いつでもどんなときでも、温かい訳では無い。ぶつかったり、悩んだり、もう嫌だ顔も見たくないなんてそんな事も含めて家族だったりする。
この家族の話を通して人間の生きづらさのようなものが、ひたむきに感じられる。人間の「役割」自分の向かうべきところは何処なのか。たとえ嫌でも逃げたくても、家族という「役割」からは逃れられなかったり。それが、良い意味でも悪い意味でも「家族」なのかもしれないと、読んでいて思う。
「幸福な食卓」というタイトルとは裏腹に、内容は比較的重く、切なく、悲しい。なのに、ふんわり、空気を包んだような柔らかさがあった。中学生向けのライトな小説であるから、とても読みやすく、私もその年齢の時に読んでいればちょっと違った見方になったかもしれないな、と思う。どの本を読もうかと悩んだ時に、この作品は大いにオススメできる一冊。読みやすいのに、中身がしっかりと詰まっているから。
一見何もなさそうな家族、でも、何もない家族なんていうのはいないのかもしれない。それが家族というものであり、人間というものだ。「切なさの分だけ、家族は確かに繋がっていく」というキャッチコピーが、この作品を綺麗に表現してくれている。危ういバランスでも、うまくバランスをとって、手を取り合って生きていく様が、私には光に見えた。
父親を辞める宣言をした父、家出した母、エリートコースを蹴って農業に身を削る兄、そして主人公の女の子。大切なものを失ったときに、それでもまだ、自分の中に大切な何かがあるということの大切さ。一人では生きていけない、たくさんの人の笑顔や言葉や力が合わさって自分が出来ていく、その過程が眩しい。
今一度、家族という奇跡を見つめ直してみませんか??

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