男の人は車が好きな人が多い気がする。私は免許も持っていないし、車のことは全くと言っていいほど分からない。車が欲しい、車が無いと困るなということも思った事が無いので不便さというものも分からない。
今回、紹介する本は車が主人公の一冊。この本を読了して、初めて車が欲しいと心から思った。我ながら単純ではあるが、それほどグッとくる一冊だったのだ。
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「いつもの風景が違って見える」とは、このこと。
聡明な弟・亨と、のんきな兄・良男の でこぼこ兄弟がドライブ中に乗せたある女優が、翌日急死! 一家はさらなる謎に巻き込まれ…!?車同士が楽しくおしゃべりする、唯一無二の世界で繰り広げられる仲良し家族の冒険譚! 愛すべきオフビート長編ミステリー。(あらすじ引用)
働いていると理不尽な怒りをぶつけられたり、どうしようもないストレスを抱えがち。なのに、物語にはより一層深い闇を求めがちな私だが、たまに、光を全身で浴びたくなるときがある。全身、心も、頭の中の脳も全てをポジティブな光、眩しすぎる光で包まれたい。そんなとき、救ってくれるのはいつも、伊坂幸太郎。
世界にいるバラバラに見える私たちって、もしかしたら一つの塊なのかもしれないな。私たちって気づいていないだけで、本当はみんなつながっているのかも。なんてことを思うようになったのも、伊坂幸太郎の作品に出会ってから。
「意味ないことなんてないんだよ」なんていう、ありがちで臭い言葉を、ありえないシュチュエーションでコミカルに物語にして突きつけてくるさまが、痺れる。
人の希望や思いやりって、笑わせてあげたいという思いって、こんなにパワーのあるものなんだな、と知る。その膨大なパワーに、読了後泣いてしまうことが私には多い。
感動物語なんかじゃないし、泣かせようとしているわけじゃないのに、「あぁ人間捨てたもんじゃないのかもしれない」って思わせてくれる。
黒い悪意をぶつけられたり、それを真正面から受け止めてダメージをくらったりした日常に伊坂幸太郎は手を差し伸べてくれる。この人の物語があるから、私は悪意に悪意で返さずに済んでいるのかもしれない。全ての伏線をラストにかっさらう爽快さ、登場人物の軽快な言葉たち、すべてがひとつになるラスト。あまりの光に、あまりにも私にくれる優しさに、読了後、放心してしまう。
ガソリン生活は、車や自転車、乗り物が全て会話をする。その会話が微笑ましくて、読み終えてしまうのが寂しくて仕方なかった。読み終えたあとに、道行く自動車、自転車を見る目が変わった。全ての乗り物が、物語に登場するもののように見えて愛しい気持ちになる。
私は車を持っていないので、持っている自転車を愛情込めて、時間をかけて洗った。思わず、話しかけそうになるが、それは辞めた。心の中で話しかけてみる。
ガソリン生活は、乗り物好きの人は物凄くハマってしまう一冊であり、そうじゃない人も、好きになるキッカケをくれる一冊になるのでは無いかと思う。そして、日々に疲れてしまっているひとや、私みたいにいつも暗い物語を読みがちだよっていう人にはオススメしたい。
伊坂幸太郎の中でも、私の中でガソリン生活は上位にランクインする一冊。記憶を消してまた一から読みたいとすら思う。この本が私にくれたワクワクは異常だった。小学校の遠足と同じくらいのワクワク。伊坂幸太郎、私にどんな希望をくれるの?かかってこい!と意気込んで、まんまとやられた一冊。希望の光にノックアウト。涙しながら笑っちゃうような。
本という世界に入れるとしたら、どの作品の中に入りたいか、そう聞かれたら伊坂幸太郎作品ならなんでもヨシ、そう答えるだろう。
そのくらい好き。だから、このくらい好きな人が、もっともっともっと、増えることを願っている。

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