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綺麗すぎる文体に惚れ惚れ まるで川のような一冊。壇蜜『噂は噂~壇蜜日記4』

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綺麗すぎる文体に惚れ惚れ まるで川のような一冊。壇蜜『噂は噂~壇蜜日記4』

川のような文章を書く人だと、一番最初に思った。あまりにも耳に触れる音が綺麗で、心が穏やかになり、落ち着く。そっと目を閉じてしまうような安心感と、日本人特有の品というものが感じられる。

作家の文体に、空のよう、雲のよう、などの表現をしたことも思ったことも一度も無い。この人が書く文章に、力を感じるわけでも希望を感じるわけでもないのに、どうしてこんなにも読んでいると心地よいのだろう。

本日紹介したいのは、壇蜜が書く、壇蜜日記4 噂は噂(文春文庫)

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私にとっての壇蜜日記は

くしゃみの止まらない猫のために空気清浄機を買い、「不条理の利用」を女子に説き、寿司屋の看板を見ては「寿司良いなぁ」と涙し、男の優しさの先にある苦くて甘い「取り返しのつかない何か」を時にかじりたくなる……〝壇蜜〟の日常を瑞々しくも不穏な筆致でつづって大反響を呼んだシリーズ、これがまさかの読み納めなのか!? 書下ろし日記第四弾。真実は本の中!各界から絶賛の声!! 予測なし理想なし悲観なし。誰も真似できない壇蜜的文章作法。──桜木紫乃 屁理屈が優美でズルい。──武田砂鉄 滴るような愛と、なまなましい傷。私はこのひとの猫か魚になりたい。──宮下奈都 (あらすじ引用)

壇蜜日記も、かれこれ四冊目。いつも殺伐とした本を読みがちな私だけれど、壇蜜日記は別格だ。

とは言っても、私は壇蜜のファンでは無い。壇蜜の情報も、この日記に書いてあることくらいしか知らないし、詳しく無い。ドラマやバラエティも欠かさず観ている・・・という訳でもない。そんな私が手にとったのは、本当にきまぐれとしか言い様がない。

私はエッセイがあまり得意では無い。よほど好きな作家ならまだしも、エッセイというだけで何か読みやすくて、その人が知れる気がして買っちゃう!という人が身近にいたことがあるが、私には欠片も無い。物語性を見いだせないと、なかなか引き込まれない事が多い。なのに・・・

この壇蜜日記は、基本的に多くを語らない。ただの、壇蜜の、日記なのだ。

とく自己主張もせず、淡々と過ぎていく毎日の中にキラと光る何かがある。キラキラ、ではない。キラっと、今一瞬光ったよね?錯覚かな?というくらいの、小さな輝き。言葉も綺麗で、眺めているだけでうっとりする。その日常の中に、ささやかな共感という光がある。

手を握ってわかるわかると頷くようなものじゃなく、確かにね、そうかもしれないよね、という、あくまで軽い共感。そして、少しの心配。この日に何かあったのか、大丈夫かね。っていうか寝すぎじゃない?ナルコレプシー?

壇蜜の日常を覗くと、だいたい、いつも雨。川のように流れる文体と、物語の奥から聞こえる雨の音が相まって、心地よい。私にとっての壇蜜日記はもう、サザエさんばりの安定感で、いつもそこにあるモノのような、不思議な本。でも、本という感じもしない。やっぱり、うっかり見続けてしまっている人様の日記、という感じ。

読み続けていると、だんだん日記の中の壇蜜が壇蜜を脱いでいく。そして大体日記の最後らへんでは、齋藤支靜加(壇蜜本名)になってふわっと消える。この本には、余韻も無い衝撃も無いが、日記に余韻も衝撃も求めないだろう。ただそこに有り続ける、どこまでも川のようだと思った。

壇蜜日記を読み始めてからというもの、テレビで彼女を見ると、秘密を共有しているような不思議な感覚を抱く。日記を読んでいるから、勝手に近い距離に感じてしまう。

嫌われること、臭いと思われること、理不尽な思いをすること・・・彼女が日記に記す微かな憂いさえも、彼女の品に変わっていくのが皮肉であり、たくましいと思った。いつまでも、私は彼女を応援したい、そして、出来ることなら日記を読み続けたい。



chiyoda

書くこと、読むこと、そして考えることを、こよなく愛しております。

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