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春の定番組み合わせ「梅にウグイス」は嘘?

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春の定番組み合わせ「梅にウグイス」は嘘?

季節季節の自然を愛し、重んじるのは日本の伝統的な嗜好です。

中でも初春を感じさせる花として愛されるのは「梅」。

各地には梅林が作られ、初春となり梅が咲く頃になると梅祭り、梅見などの行事が行われます。

花鳥風月を粋とする日本人の年中行事のひとつです。

そんな梅の花といえば、なにを思い浮かべますか?

おそらく多くの人が「ウグイス」と答えるでしょう。

「梅にウグイス」という取り合わせは、昔から春の定番とされているものです。ただ、この「梅にウグイス」という組み合わせですが、違う説があるのをご存知ですか?

 

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梅の花にウグイスはこない。

だから違う説が生まれた。

実際のところ、梅の木にウグイスはあまり飛んできません。

梅見に行かれたことのある方も多いと思いますが、そこでウグイスを見たことがありますか?

あの美しい囀りを聞いたことがありますか?

おそらく、多くの方がその姿を見たことも、囀りを聞いたこともないはずです。

「いや、私は緑の小鳥が梅の花の中を忙しく動き回っているのを見た」という方はいるはずです。

たしかに、スズメより少し小さく鮮やかな緑色をした鳥が、梅の花の間に見え隠れする、という光景は見ることができます。

しかし、その鳥はウグイスではなく、メジロです。

メジロは梅だけではなく、桜の花の蜜も吸いにくるのです。

なので、昔の人が間違えたとか、あれは「梅にウグイス」ではなく「梅にメジロ」ではないのか、などという説が生まれてきたのです。

 

昔の人はほんとうに間違えた?

花札に見る花鳥風月。

では「梅にウグイス」という春の定番は、どうやって生まれてきたのでしょう。

花札をご存知ですか?

私は花鳥風月を愛でる日本人が生み出した、粋な庶民芸術だと思っています。

1月から12月まで、季節ごとに花を描き、そこに生き物や行事を描いた、素晴らしいアートだと思っています。

その花札で2月の札は「梅」。

カス札と呼ばれる2枚には梅の花が、短冊と呼ばれる札には梅に「あのよろし」と書かれた赤い短冊が、タネ札と呼ばれる一番点数の高い札に梅と緑色の鳥=ウグイスが描かれています。

少し話が脱線しますが、花札では2月の「梅にウグイス」の他にも花と鳥の組み合わせが多くあります。

1月は「松にツル」、4月は「藤にホトトギス」、8月は「薄にカリ」、11月は「桐に鳳凰」、12月は「柳にツバメ」といった絵が情緒豊かに描かれています。

こんな風に、花札は花と鳥を愛する日本人の心がこもったアートなのです。

話は逸れましたが、私の言いたいことがおわかりでしょうか?

たとえば1月の「松にツル」、実際に松の木にあの大きなツルは来ますか?

4月の「藤にホトトギス」、藤にホトトギスがとまっているのを見たことがありますか?

「梅にウグイス」もそういうことなのです。

 

梅にウグイスが来るという意味ではありません。

では何故「梅にウグイス」は定番となったのか?

梅の花というのは、初春を感じさせる花です。

長い冬が明けて、やっと春になった、いわば「春の訪れ」を告げるおめでたい花です。

ウグイスは漢字で書くと「鶯」ですが、「春告鳥」と書かれることもあります。

つまり、こちらも春を告げるおめでたい鳥なのです。

梅もウグイスも春の訪れを告げるおめでたいもの、そんな春のめでたさを端的に表したのが「梅にウグイス」という絵であり、言葉なのです。

なので、実際に梅の木にウグイスがよく来る、とまっている風景ではなく、「おめでたい春の訪れを告げる二つ」を同時に表すことで、待ち望んだ春の嬉しさを表現したのだと思います。

ことば辞典などでは「梅にウグイス」は「似合うもの」という表現がなされています。

また花札の話をすると、1月の「松にツル」は冬でも緑を保つ松に雪に映えるタンチョヅルを、8月の「薄にカリ」は薄に似合う月とカリを、12月の「柳にツバメ」は俗に「雨」と呼ばれる12月の札に描かれた柳に「低く飛ぶと雨になる」と言われているツバメを、それぞれ組み合わせて描いたものです。

その全てが「似合うもの」なのです。

 

「梅にウグイス」は日本語の美しい表現なのです。

「梅にメジロ」ではありません。

「梅にウグイス」というのはあくまでも風景ではなく言葉なのです。

なので、実際の風景では梅にメジロだったとしても、あくまでも「梅」に調和する鳥は「ウグイス」で、それを「言葉」として表現したものに他ならないのです。

日本古来の言葉の美しさで語った「春の訪れのめでたさ」を表す言葉なのです。

くれぐれも、知ったかぶりに「梅にメジロ」なんだよ、などと言わないようにしてくださいね。

 

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