私はテレビを見ない。ドラマもバラエティも、理由はうまく形容が出来ないが、苦手だ。メイクをしている短い時間だけ、ニュース番組をつけることはある。
今はネットで事足りてしまうし、テレビ番組を見るという概念が無い。家に帰ってとりあえずテレビをつけるという人が多いが、私は無音でないと心休まらない。ノイズでしかない。が、旅行先や他人といるときは譲歩しないとならないし、空気が悪くなるのも嫌なので、見る振りをしたりする。そんなテレビっ子とは無縁の私でも、知っている存在、鈴木おさむ。
一番最初に鈴木おさむを知ったのはいつだったろう。確か、お笑い芸人の森三中、大島美幸と結婚、というワードが耳に入ったとき、だったか。それとも、「大島美幸、鈴木おさむと妊活宣言」というワードが耳に入ったときだったかは忘れたが、どっちにしても、(大変失礼だが)男ってすげえ。鈴木おさむってすげえ。という衝撃が脳天に走ったことを覚えている。
ネットで鈴木おさむが関わっている番組を調べたが、テレビを見ない私でも知っている、聞いたことがある番組名の数々に驚かされる。やっぱすげえんだ。鈴木おさむ。
すげえ感を出していない、そこらへんでもしすれ違ってもただのおっさんとしか(大変失礼だが)思えない。なのに、すげえ。知れば知るほど才能に驚く。
スポンサーリンク
名刺ゲームは、人の本性をあぶり出す心理ゲーム
神田達也は、人気クイズ番組を担当するプロデューサー。40歳すぎてようやく「クイズ! ミステリースパイ」でヒットを飛ばした遅咲きのテレビ局員。
ある夜、帰宅してみると、高校生の息子・和也がリビングの壁に磔にされ、そばに見知らぬ男が立っていた。混乱する神田に、男は爆弾のリモコンを見せながら言う。
〈今からあなたに、あるクイズにチャレンジしてもらいます〉
部屋に招き入れられたのは5人の男女。どうやら神田を憎んでいる人々が集まったらしい。謎の男は6枚の名刺を取り出して、それぞれに正しい名刺を返せれば正解というゲーム、「The Name(ザ・ネーム)」に参加するよう神田に命じた。ただし、一度でも間違えば、和也に取り付けた爆弾のスイッチを押す、という条件を付けて……。鈴木おさむが描く、究極の、テレビ業界・エンターテインメント。(あらすじ引用)
小説というより脚本のような、脚本というよりも、自己啓発本のような、不思議な本だった。私の感覚では、「自己啓発本」かなぁ。読んでいるとメラメラ燃え上がってくるものがある。闘争心のような、仕事への熱意がどんどん燃える感覚。作品の中で、読者に投げかけてくる正論、名言の数々は痺れた。
「仕事を勝ち取るには実力だけじゃダメだ、賢さ、ズルさも必要」「ずるい事をして勝った人を責めるのは単なる嫉妬だろう」「同じ商品にオマケが付いていたら、オマケがある方を選ぶようにステージに上がるには付加価値が無いと。」などなど、作品の中で被害者ぶって泣きつく人間をぶった切っていく。あくまで中立の立場で居続けるゲーム主催者。
雑学のようなものも散りばめられている。例えば、子を残す目的以外で性行為を行うのは人間のほかにボノボがいる、とか。ボノボのくだりは、この物語でのおおきな鍵になっていた。この作品の中で紹介された雑学の一つで一番印象に残ったのは、「忘れたい記憶を消す方法は無いが、上書きはできる」というもの。その忘れたい記憶を思い起こしたときに、まず、白黒の映像に自分で過去を加工し、次に、ぼかしをかける、淡く映像にモヤがかかったところで、その場には決して似つかわしくないハイテンションなポップな曲をかける。これを繰り返すと、嫌な記憶として脳には残らない。結局、全て司るのは脳なのだから、脳を騙してしまえばいい、というもの。これは、すげえね、鈴木おさむ。・・・私もやってみよう!!
鈴木おさむが書く、テレビ業界の本だからこそ、読んでてこれは実話だろ?とリアリティーを感じざるを得ない。リアルだからこそ、怖い世界、魅力のある世界というのを知る。テレビ業界に夢見てる人も少なくないだろうけど、そんな人に読ませたら、抱く感情も違うのかもしれない。黒い闘争心と私利私欲が蠢く世界だと知った上で踏み込む勇気と根性が、どれだけ大事かとこの本は教えてくれた。
脚本形式で書かれているので「」が無く、人によっては読みにくさを感じてしまうかもしれない。下ネタというか、結構生々しい描写も多数。ボノボとか。男同士の絡みも。全体的に、女性よりも男性にオススメしたい一冊です。・・・ところで皆さん、日本人の誰しもが好きで心打たれた名曲がもし、覚せい剤を打った人が作った曲だったらどう思いますか?覚せい剤を打たないと、その曲は作られなかったとしたら?
そんな哲学的な問いを、本書は私に投げかけてくれました。私はまだ答えが出せない。必要悪?・・・良かったら、あなたもこの本を読んで私と一緒に考えてください。

コメント
コメントはありません。