次は何の本を紹介しようかと、自分の家の本棚を眺めていると、本当に私という人間は暗く重い物語ばかり好んでいるなぁと自分自身に引く。身震いがする。自分自身なのに、ちょっと心配すらしてしまう。ジャーナリストを目指していたこともあって、ノンフィクションも多い。虐待や自殺、殺人事件をテーマにした本も多く、恋愛ものやファンタジーは皆無だ。もし、家の近所で事件があり、うちに聞き込みをしに警察が来て、本棚を見られた日には確実に怪しまれるだろうと思うほどだ。
本屋で働いていた時に、「どんな本を読むの??」と聞かれ正直に答えたら、ものすごく意外だと驚かれた。まぁ、「自殺や虐待、殺人事件をテーマにした本を読んでそうだよね、そうっぽいもん」と言われるのも物凄く微妙ではある。が、キラキラした可愛い女の子の物語を読んでそうに見られるのも迷惑だったりする。
家に友人を招くたびに、本棚に入りきらなくなって廊下にタワーのようにして積んである本に驚かれ、その次に本棚のラインナップに心配されるということが、しばしばあった。そりゃあそうだろう。私が生まれて初めて読みたいと思って、朝の読書に持っていった本は「呪怨」だったし、本棚には殺人事件のルポが並んでいたりするのだから。「何か悩みがあるの??」と直球に聞く子もいれば、苦笑いするしかない子もいて、家に招いた友人を困らせていたのだな、と今になっては思う。そう考えると、意外にみんな本棚を見るのだな、とも思う。
本に関して全く興味のない子でも、必ず家の本に注目していたし、本棚をじっくり観察する子もいた。
もしかしたら、本が好き嫌いに関わらず、人の本棚を見たいという人は一定数いるのでは無いか。
本は別に好きでは無いが本棚は覗きたい!!なんていう変態も、広い世の中だしいるかもしれない。
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今回紹介する本は、私の本棚/新潮社編
本について、本棚についての思いを数々の作家が綴ったエッセイだ。
本好きの私は、うんうんと頷き、握手を交わし、なんならハグすら交わしたくなるほどの強い共感を抱く。とくに、’スライド式の本棚が本の重みに耐えかねてスライドしなくなる’という悩みは私と全く同じだった。
スライド式にすれば、めっちゃ本入るしなんかカッコいいじゃん、という安直でアホっぽい考えから即座に家にお迎えしたスライド式本棚は今や、沈黙を守っている。動かない。その奥に探しているだろう小説があるのに。
通勤や通学、カバンに忍ばせるのにとても便利な文庫だが、私は個人的に好きな作家や、これから伸びるだろうと応援している作家の本は必ず新刊で購入する。
それが作家へ敬意を払うこととを思っているからだ。だから、うちにはハードカバー(単行本)が多い。そしてハードカバーは、たまに人を殺せてしまうのではないかと危惧するほどに重たく分厚い。
今は、本当に本当に本当に欲しい!!ハードカバーじゃないとダメなんだ!!と言い切れるものでないと、ハードカバーでは購入しない。
それか、図書館で借りる、または文庫で読んだ後に、のたうちまわるほどハードカバーで保存したくなるような本で無いと購入しない。
百田尚樹の永遠の0は、文庫で読んだ後に、わざわざ何故か電車に乗って東京の神保町まで行って愛蔵版を購入した。
うん、ちょっとやっぱり変わっていると思われるのも無理がない、謎の本へのこだわり。
その謎や不思議な感覚が、この本に、ぎっしり詰まっている。不思議というか、我々読書家には不思議でもなんでもないのだけれど。
それにしても、井上ひさしの蔵書がなんと7万冊!!というのは驚いた。
私の蔵書は400冊だがその冊数で、わーわー言っているのが恥ずかしくなるほどだ。
本棚と言っても、その中身や、並べ方など、人の個性が物凄く表れる場所だろう。私は出版社ごとに分けようと思い、二時間ほど作業したところで断念し、結局、作家順に並べている。
これも、あいうえお順に並べたいところだが、それは出来ていない。とにかく、本棚と向き合おうとすると時間が掛かるし骨が折れる作業だ。蔵書が多ければ多いほど。
もはや、小さな本屋と化している。
たまっていってしまうのだから、売るなり捨てるなりすれば良いのだが、それが出来ない。自分が今まで読んだ本は基本的には残しておきたい。
こんなに読んだのかという思いに耽りたい。不思議と、本を整理している時でも、本によっては手にとっただけで、買った時の自分の状況や思いや季節が思い出される。まるで、そのときに舞い戻るかのようだ。私は、その感覚が好きだ。
収集癖があるのだろうか、一時期、観た映画を全て購入していたら大変なことになった。
本書は、ところどころ写真も掲載されていて、目で見ても楽しめるところが良いところ。本について書いてある本の中で、一番読書家が微笑ましく読める本なのではないかと思う。
何故なら、みんな、困った困ったと言いながら不思議と、「楽しそう」だから。それが伝わってくるから、読んでいる自分自身も、微笑ましく読めてしまうのではないだろうか。
人が好きなもののことを話すとき、輝いて見えるのは何故だろう。
本書でも、ひとりひとりの本への愛や、本棚に対しての愛や、こだわりが漏れ出し溢れ出し、それが言葉になる様が美しく映る。
一緒に本について語り合っているような、楽しく豪華な時間が、この本の中で流れている。
本が増える、置き場がない、というのは本好きには死活問題。その問題の向き合い方が人それぞれ違って、面白かったり、その発想は無かった!!と驚いたり、読んだあとに本への愛が増すようだった。
本好きの悩み
これは本書とは全く関係無いが、個人的な悩みとして、いつも本を読んでいたり家に本があったりすると、やはり一回は言われるのは「オススメの本ってなに??」だ。
これは、とても難しい。なんの情報もなく手放しに、自分の好みを押し付けていいのか。それとも、何系のジャンルで勧めてほしいのか聞いて、そこから答えを出したほうが良いのか。そもそも、一体なにを言えばいい、なにが正解なんだ、と私は頭でっかちなので、いつもいつも困る。
そして悩んだ挙句、「自分が個人的に好きな本を言えばいいのか、君みたいな人に合う本でオススメの本を伝えれば良いのか、今どっちにしたらいいか悩んでるよ」と言う。
そして、大抵、「どっちも」と言われる。
「どっちも」と答えてくれた人は、場を繋ぐためだけに聞いてるのであって、本当に知りたいわけじゃなく、たいして本に興味もないので勧めたところで、「じゃあ貸して」または、「今度買ってみるわ」とはならない。基本的に、ならない。せめて漫画だったらまだしも、小説はそういう展開にほぼならない。知っている。
なのに、バカ真面目に向き合って本を紹介してしまう。なんなら、いつもより饒舌に話して見せちゃう。
・・・楽しかったり、疲れたり、無駄な力を発揮してしまったような気分になったりマチマチだ。
わかるわぁ、って人が一人でもいたら嬉しく思う。
私に共感が無くとも、本書に一人くらいは共感できる作家さんがいると思うので、是非、手にとっていただきたい。それがキッカケになって、読書にハマったり、または、前より本が好きになったりしたら、良いなぁと心から思う。本と人の架け橋になれたら、それ以上のことは無い。

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